カスタマージャーニーでは説明がつかない!パルス消費やバタフライサーキットについて

マーケティングの基本として、「カスタマージャーニー」という言葉が定着しています。購買行動を旅行に見立てたもので、一般的にはそれは直線的に流れていくとされています。しかし実際の生活者の行動を見ると、それはどうやら違っているようです。

この記事では実際の生活者の行動を考え、ジャーニーとの比較や実践的なマーケティングのヒントを紹介したいと思います。

Googleによる分析

Googleによる分析

まずはこの記事の前提になる、Googleの分析について紹介していきましょう。実際には非常に多くの解説がなされていますが、最低限必要なポイントだけをまとめていきます。

1.パルス消費

「パルス消費」とは、買いたいという気持ちが瞬間的に起こり、商品を探して、発見する。そしてその瞬間に購入までをおこなう、という消費行動です。衝動買いに近いといえますが、Googleによると従来からのそれとは違うとしています。

パルス消費が広がった背景には、スマホの普及があります。気になることがあればすぐにスマホを取り出して情報を得ることができます。さらにすぐに購入ができるので、パルス消費が成り立つのです。購入の一つ手前のプロセスとなりますが、マンションや車、あるいは保険などは資料請求や問合せをする事を、購入とみなすことができます。

さらに付け加えれば、スマホを使ってそうした購入(または資料請求や申込み)まですることに抵抗がなくなった、ということも後押ししています。デバイスの中心がパソコンからスマホへと移っていく時期には、「果たしてこんな小さな画面で購入、申込みをするのか」という声も聞かれました。しかしUIデザインが進化したこともあり、その抵抗は薄れ消費行動の中心もスマホになりました。逆にいうとスマホに最適化させたUIでなければ、パルス消費が増えた現代でビジネスは成功しないということです。

Googleはパルス消費のさらなる分析として、6つの直観センサーというものも紹介しています。

  • セーフティ
  • フォーミー
  • コストセーブ
  • フォロー
  • アドベンチャー
  • パワーセーブ

これらは商品やサービスを見た際に、ユーザーがどう感じるかの分類です。これを刺激することで提供者側から見た成果へと導くことができるのですが、6種類は常に発生するのではなく商品、サービスの種類、あるいはタイミングによっても変わります。さらに大きく時代の影響も受けます。

まずはパルス消費という、「すぐに調べてすぐに買う」という消費行動が多くなっていることを押さえておきましょう。

2.バタフライサーキット

パルス消費が発生する際に大きな役割を果たすのが、検索です(ただこの分析の主体者がGoogleなのでそう規定していますが、実際にはSNSなども含めて行動している、と捉えておいた方がいいでしょう)。

近年のマーケティングでは消費行動がおこるのをカスタマージャーニーにし、それをもとにプランを組み立てていくという手法が多く取られています。つまり認知から購入までが、一直線の流れです。あるいはトレンドとしてのカスタマージャーニーだけでなく、昔からの消費者行動のモデルとして、認知から購入までの直線的な流れで、AIDMAという消費行動が基本とされていました。

しかしパルス消費を前提にしたGoogleの分析によると、「バタフライサーキット」という情報探索の行動が見られると言います。それは「さぐる」「かためる」という二つの検索行動を繰り返しながら購入にいたる、といったものです。

カスタマージャーニやAIDMAで見れば「さぐる→かためる」という一直線になるはずですが、バタフライサーキットのモデルはそうではありません。

名前が示すように、さながら蝶の羽のような二つの円を行き来している、というのが購入までの検索行動だというのです。

バタフライサーキット

バタフライサーキットのモデル図(Googleの公式紹介ページより)

さらに「さぐる」「かためる」の中には、それぞれ四つのモチベーションがあるとしています。

さぐる

  • 気晴らしさせて
  • 学ばせて
  • みんなの教えて
  • ニンマリさせて

かためる

  • 納得させて
  • 解決させて
  • 心づもりさせて
  • 答え合わせさせて

これをもとにGoogleは5つの行動パターンを導き出し、不動産やスキンケアなど5つの業種でどのパターンが色濃く出るかを分析しています。

一例をあげましょう。一般的な見方でいくと、不動産は現実的には購入できないような理想の物件なども含めて探し始め、やがて実際に購入できる物件に絞った情報を探す、といった行動を多くのユーザーが取るはずです。そのためGoogleの分類でいくと、不動産購入の初期は「気晴らしさせて」の行動が色濃いとしています。

さらにバタフライサーキットが面白いのは、併行してさまざまなものを探したり、一つの購入が終わるタイミングで次の関連するものを探し始める、といった動きをすることです。

マンションを購入する場合には周辺環境や子どもの学校の情報などを同じタイミングで探すことでしょう。マンションの購入が終わりいよいよ住み替えとなれば、引っ越し業者を探したり新しい家具を選び始める、といった行動を取るでしょう。

このように自分の生活の中での消費行動を思い返せば、決して一直線型のカスタマージャーニーの消費行動ではないことがわかるはずです。また一分野の商品やサービスだけを見るのではなく、複数が気になったり探しているでしょう。

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どういった施策が考えられるか

ここまで見てきて、カスタマージャーニーというフレームワークはどうも現実に即していない、と感じた方は多いのではないでしょうか。マーケターとしては、それに対してどういった施策をとれば良いのかが重要になります。いくつかのアイデアを紹介していきましょう。

範囲をひろげて広告を出す

一般的に広告は「関連するもの」「その人が関心を示している場合」というターゲットを絞った出し方が効果的、とされています。ただ瞬間的に購買行動が発生するパルス消費、あるいは調べていることが行きかうバタフライサーキットがユーザーの実態だとすると、より範囲を広げた広告が必要になってきます。

たとえば国内の温泉を見ているユーザーに、自動車販売の広告を出すといった具合です。それをすれば(ドライブをして温泉旅行もいいかな)となり、自動車の購入には結びつくかもしれません。しかしこれをすると、広告費も増えていきます。そのため広告ですべてをカバーするのは、現実的には難しいといえます

オウンドメディアでエンゲージメントを高める

購入や申込みなど、必要な時だけオウンドメディア(自社サイト全般を含む)に来てもらうのではなく、定期的に再訪してもらうというのも手です。そこで網羅的に他の商品やサービスを案内するということであれば、広告費の発生はありません。

ただしエンゲージメントを高めるための手段が必要になります。

一般的にはメールやプッシュ通知等による案内でしょう。あるいは毎日チャレンジできるゲーム、日替りのセールといったもので再訪を促すことも可能です。

レコメンドなどサイト内の機能

生活者は自分の消費行動を理解しているわけでも、意識しているわけでもありません。ですから生活者自身に気づきを提示してあげることで、消費行動に結びつく可能性があります。

たとえばレコメンドは、そのユーザーや見ている商品に合わせて関連するものを提示する機能です。

そこを一歩進めて、「過去によく見ていたが、最近は見ていないものを出す」、というのも面白いレコメンド手法です。たとえばある動画配信サイトでは「そうしたことを実行しているのではないか」、という凝ったレコメンドがされます。筆者自身も興味があったのを忘れていたようなジャンルが不意に出ると、「そういえばこれも見たいな」と感じ、ついクリックしてしまいます。

BtoBの場合

消費行動はどうやら一直線のカスタマージャーニー型ではない、というのを理解してもらえたでしょう。

しかしカスタマージャーニーがまったく無意味かというと、そうではありません。BtoBの場合だと、多くの場合でカスタマージャーニーが有効と考えられます。

なぜならビジネスでは、何らかの目的を期限内に実行する必要があるからです。たとえば年度内に別の会計ソフトへの移行を考えている場合は、「認知→探す→検討する」といった直線型の行動が多く見られるはずです。検討の前に資料を申し込むか、さらに比較が入るかなども加味して、カスタマージャーニーで戦略を練るのは有効な手段となるでしょう。

ただしこれについても常にカスタマージャーニーが有効、とはいえません。「将来的に会計ソフトを入れ替えたい」といった漠然としたニーズであれば、その行動は一直線であっても捉えずらいものになるからです。あるいは接客強化のためにチャットツールを探し出したのが、総合的な接客ツールに途中で出会って関心が揺れ始めるといったことも起こりえます。

バタフライサーキットが多く見られるBtoCはもちろん、カスタマージャーニーが有効なBtoBでも常に定番のフレームワークにあてはまるわけではない、というのをよく理解しておきましょう。

まとめ

ユーザーのニーズは多様です。人間の心理がこの数十年で大きく変わったというわけではありませんが、インターネットが普及したり持ち歩きできるスマホがデバイスの中心になるなどして、行動に変化は起こりました。

マーケターはそうしたユーザーのニーズや動きの移り変わりをよく理解して、戦略や戦術を練っていくことが大切です。

実際のところBtoCはこれが複雑すぎて、ノウハウが確立しづらいという面があります。それに比較するとBtoBはシンプルに取り組めるといえます。インバウンドマーケティングでカスタマージャーニーを組み立てていくというノウハウを、私たちリードプラスは数多く提供しています。ビジネスを継続的に成長させたい、一段上に引き上げたいとお考えの方は、ぜひお問い合わせください。

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