AIをマーケティングに上手く取り入れていくための基礎知識

AI(人工知能)がデジタルマーケティングでも重要なものになっている、という認識はほとんどの人がお持ちのことと思います。

しかし、多くのマーケッターのかたは「AIで何ができるの?」「デジタルマーケティングはどうなるの?」「プログラムを覚えないといけないの?」といったモヤモヤもあるはずです。

この記事ではそんなモヤモヤを晴らしながら、エンジニアではない経営者やマーケティング担当者、企画担当者が、今、そしてこれから何をしていけば良いのかをお伝えしていきます。

AIは4つのタイプに分類

「AIで何ができるの」という疑問について、解説していきましょう。まずはAIについて大まかなイメージを持っていただければと思います。

AIは、大きく次の四つに分類されます。

  1. 識別系
  2. 予測系
  3. 会話系
  4. 実行系

1は画像やテキストの情報を見て、分類などをしていく分野です。
AdobeのCMS、「Adobe Experience Manager」は画像をアップロードした時点で画像から内容を読み取り、それを言葉にしてタグづけをおこなっていきます。これがデジタルマーケティングでの活用の一例です。

2は異常データの検出などを指します。
アクセス解析やBIツールには、「異常が出たらアラートを出す」という機能を持つものが多くあります。大量のデータから外れ値を検出して知らせてくれるわけですが、単純な外れ値の検出だけでなく、過去からの膨大なデータに基づく予測までを担うのが予測系AIの真価といえます。

3は比較的イメージがしやすいかもしれません。すでに数多くツールが出ている「チャットボット」がこの代表です。またAlexa(アレクサ)もこの一つです。

4はオンラインの世界を離れ、自動運転や工場の機械による代行作業などを指します。単純なプログラムされた動作ではなくデータを元に判断しながら自動運行する点が今までのファクトリーオートメーションと違います。独自で動く自立型機械制御がAIを活用した機械の発展形です。

予測系で精度の高い予測をおこなうことや、会話系の自動制御といった機能は「人間拡張型」とも言われます。異常データの検出や運転は人がもともとできる作業のため「人間代行型」とされますが、それを超えたことができるのが人間拡張型の醍醐味です。

このようにAIの四つのタイプそれぞれに人間代行型、人間拡張型の二つがあることから、AIは

「4(識別系、予測系、会話系、実行系)×2(人間代行型、人間拡張型)」

で計八つのタイプに分類されます。

AIはデータが基本であり学習が重要

AIがここまで発展し、さらに進化を遂げていくために必要なのが学習です。

ただプロダクトとしてAIのみが存在しても機能しません。つまりAIを買えばなんでもしてくれるという単純な話ではなく前提のデータが必要ということになります。そして、膨大なデータをAIが学習することで、先ほど紹介したようなさまざまなことができるようになるのです。

現代になってAIが急速に発展してきたのは、コンピューター技術の進化と切り離せません。コンピューターのスペックが飛躍的に発達したことで、大量のデータ処理ができるようになりました。それまで学習させたくてもできずにいたAIが、学習できる環境を持つことができたのです。

マシンラーニング(機械学習)とディープラーニング(深層学習)

学習には「マシンラーニング(機械学習)」とそれを発展させた「ディープラーニング(深層学習)」の二つがあります。

マシンラーニングは膨大なデータを使って学習をし、その中で分類やルールといったものを発見する手法です。

一方ディープラーニングはマシンラーニングを発展させたものです。このディープラーニングが可能になったことから、AIが人以上のことを担う可能性が拓けたといえます。

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AIや機械学習は実際にはもっと複雑ですが、「膨大なデータのうえにAIが成り立っている」ということをご理解ください。

数年前のトレンドワードに「ビッグデータ」や「IoT」というのがありましたが、この言葉の広がりのあとにAIの発展がついてきているのは、決して偶然や仕掛けられたブームによるものではありません。膨大なデータが蓄積されそれが処理できる環境が整ったからこそ、人類が長年に渡り研究をつづけてきたAIがようやく実践的なものとなったのです。

AIで取り扱うデータについて

AIとデータが密接な関係にあることを理解いただいたうえで、マーケターや企画者がすぐに取り組むべきことについて読み進めていきましょう。

ポイントはAIが学習しやすいデータ構造

マーケター、企画者の皆さんは、「データを扱う機会が増えた」と感じていることでしょう。経験と感だけではなかなか信用されない時代になってきました。「データを用いないアイデアは提案が通りにくくなった」と悩んでいる人も多いのではないでしょうか。

またデジタルマーケティングツールの多くも「データをもとに動作」というのが一般的になっています。

それでは実際に以前までデータの扱いをどうしていたでしょうか?

エンジニアが抽出したものをcsvで渡されてMicrosoftExcelなどで加工、あるいは専用ツールにインポートしてグラフ化したりレポートを作るという作業ではありませんでしたか?それがデータを用いる、という大半のイメージだったかと思います。

あるいは自社にデータアナリストがいる環境であれば、加工され提案が添えられた分析結果が出てきていたかもしれません。

ビッグデータからそれを実行に移すマーケティングオートメーション、さらにAIにより自動化する流れが顕著になってきた昨今、マーケターあるいは企画者自らがデータに触れる機会は確実に増えています。

この記事は非エンジニア向けですから、テーブルの構造を理解したり自らがSQLやNoSQLを使いデータを抽出する必要性には言及しません。

しかし少なくともデータの基本を理解し、それをどう用いればいいかについては知る必要があります。

先ほど挙げたようにこれまでは膨大なデータを「人が見やすく、扱いやすいようにするにはどうすれば良いか」がポイントでした。具体的にはグラフ化やレポートの作成です。

しかしこれからは、(AIを用いた)ツールが学習しやすいデータについても考えていく必要があります。人だけを意識して扱っていれば良かったデータを、AIやツールに対しても最適な形にするのが重要となってきているのです。

概念だけではイメージがつきにくいと思いますので、次項では具体的に広告とSEOを例に見ていきましょう。

具体例(Google広告、SEO)

デジタルマーケティングの中の広告手法、特にGoogle広告(旧GoogleAdwords)は多くの事業で導入されているでしょう。実際の運用経験があるという人も多いはずです。

Google広告のアカウント構成は、次のようになります。

「キャンペーン>広告グループ>キーワード」

キャンペーンを親にして、その中に広告グループを作っていきます。広告グループ内にはキーワード、それと広告文が設定されます。

以前は、なるべく細分化させたものが良いとされていました。たとえば人材派遣の場合だと、下記のような構成が考えられます。

・キャンペーン1:ビックワード

広告グループ:人材派遣、人材派遣会社、人材派遣登録、紹介予定派遣・・・

・キャンペーン2:その他人材

広告グループ:人材紹介、アルバイト、正社員・・・

・キャンペーン3:資格

広告グループ:事務系資格、パソコン系資格、医療系資格・・・

これはあくまでも一例で、たとえばパソコン系資格を細分化してWeb、Office、CAD、情報処理・・・などとするパターンも考えられます。細かく分けるという意味では1広告グループに1キーワードが理想、とする手法もあったほどです。

しかし現在はまったく逆で、キャンペーンや広告グループはなるべく集約させた方が良いとされています。

ですから上の人材派遣の例だと、リンク先が一つだとしたら次のように1キャンペーンに集約ということも考えられます。

・キャンペーン:人材紹介

広告グループ:人材、資格・・・

といった感じです。

非常にシンプルな作りになったことがわかります。

なぜアカウントの作り方が変わってきたかというと、リスティング広告の運用が手動から自動に変わったからです。もちろん現在も手動設定を選ぶことは可能ですが、自動設定で運用した方が遥かに良い結果が出るという報告が、各所から届いています。

リスティング広告のエキスパートが揃うような代理店でも「自動の方が成果が上がる」という評価が出ています。たとえば数百あった広告グループを数十個にして自動設定で運用することで、コンバージョン数が飛躍的にアップした、という例もあります。

シンプルな構造にして自動化することでどうして結果が出るのかというと、システムが学習しやすいからです。

まずは広告を一斉に配信してクリックが多く出るキーワードや広告を学習、その中でコンバージョンが効率よく取れていくキーワードを特定していくイメージです(入札をクリックの最大化から始めて、データが十分にたまったら目標コンバージョン単価にきり変えることを前提にしています)。

広告グループが細かく分けられていたり、キャンペーンが複数あって予算に制限がかかる状態だと、学習がしにくくなってしまいます。もちろん運用でこまめに設定を変えていくと継続した学習ができなくなってしまうので、なるべく人が手をかけない方が良いのです。

こうしたリスティング広告のシンプルなアカウント構成はよく「SEOと同じ」と言われます。訴求したいテーマごとにディレクトリを分け、その下に各コンテンツをグルーピングしていくというのがサイト設計の基本です。

以前はこうした設計は、「検索エンジン(クローラー)がサイト内を辿りやすいため」という説明でしたが、現在は機械学習の要素も入ってきています。

このように身近なデジタルマーケティングの中でも「学習しやすいデータ構造」というのが必要とされ、それを実行することで成果を出してきています。

まとめ

ここではGoogle広告、SEOといった多くの人になじみのあるマーケティング手法を例に説明しましたが、実際にはCDP(あるいはDMPやDWH)といったデータ基盤、マーケティングオートメーションや接客ツールなどの施策、BIツールに代表される分析、カスタマージャーニーなどのUXといった、現在主流となってきているマーケティングのそれぞれに対して「学習しやすいデータ」は必要とされています。

これを実行するのに大切なのはデータ、機械学習、AIに関する基礎知識、それらの知見をもとにした戦略の構築です。

これからはほとんどのマーケティングで、データがより活用されていくことになるでしょう。データを扱ううえで人だけでなく機械(学習)に対するわかりやすさも重要となることを、よく理解していくようにしましょう。

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