SEOとリスティング広告の関係を考察すると見えてくるもの

インバウンドマーケティング担当者はSEOを意識します。その一方でリスティング広告担当者は広告効果を意識します。しかし、SEOとリスティング広告が一緒に語られることは、ほとんどありません。どちらか一方だけ見ていると見落としていたこともあるかもしれないと思い、今回はSEOとリスティング広告を一緒に考えてみます。

まず前提として、SEMというと多くの人がリスティング広告のことを思うかもしれません。しかし、SEMは「Search Engine Marketing」の略であり検索エンジン全般を使ったマーケティング手法を指します。つまりSEMは、自然検索の順位を上げるためのSEOとリスティング広告の両方を含んでいるというのが正しい解釈です。

それでは早速、先に進みましょう。

リスティング広告が表示されないケース

一般的にリスティング広告では「キーワードを設定しておけば、広告は掲載される」と考えているかもしれません。しかし、自身がGoogle ADで設定したキーワードを検索して見ても広告が表示されない時があることを経験した方は多いのではないでしょうか。

検索結果例 1

次の検索結果をご覧ください。「腰痛 原因」で検索した結果です。

腰痛 原因

次に「腰痛マットレス」で検索しました。

腰痛マットレス

 

「腰痛原因」での検索結果は、広告はなしです。一方、「腰痛マットレス」では広告が掲載されます。

検索結果例 2

もう一つ、別のジャンルを確認してみましょう。

「リフォーム」で検索しました。

リフォーム

次に「リフォーム見積もり」で検索した結果です。

リフォーム見積もり

さらに「リフォーム歴史」で検索しました。

リフォーム歴史

 

「リフォーム」という単ワードと「リフォーム 見積もり」は一番上に広告が表示されましたが、「リフォーム 歴史」では広告は表示されませんでした。ちなみに他にも「リフォーム意味」「リフォーム スペル」といった組合せでも、広告は表示されませんでした。

広告が掲載されないケースもある

広告を出稿している各企業の実際の設定内容はわかりませんが、「腰痛」や「リフォーム」といったキーワードで幅広く部分一致で広告を設定していれば、常識的に広告掲載はされるはずです。

しかしここまで見てきたように、広告が掲載されるケースとされないケースがあるようです。

広告に関する補足

上の結果に関して考察を加える前に、リスティング広告について少し解説をしておきましょう。

マッチタイプ

リスティング広告のキーワード設定には、「マッチタイプ」というものがあります。先ほど部分一致という言葉を使いましたが、これは昔からあるマッチタイプで「そのキーワードが含まれている言葉で検索がおこなわれたら広告を表示する」というものです。

たとえば「地酒」というキーワードを部分一致で登録しておくと、「地酒 ランキング」「地酒 新潟」「地酒 おいしい」といった言葉で検索した際に広告が表示されます。マッチタイプは他に「完全一致」「フレーズ一致」「絞り込み部分一致」の三種類があります。ここでは個々の説明はしませんが、部分一致はこれらの中でもっとも幅広く広告が掲載されるマッチタイプです。

除外キーワード

キーワード関連では他にも「除外キーワード」という設定があります。

除外として特定のワードを登録すると、その言葉を含んだ場合は広告が表示されない、というものです。ですから上の例ではあらかじめ、リフォームに対しては「歴史」や「スペル」といった除外キーワード設定がされていた可能性があるわけです。

他の広告設定(「曜日」「時間帯」「地域」「デバイス」)

他にも広告の設定には、「曜日」「時間帯」「地域」そして「デバイス」などがあります。

Webサイトのリニューアル時に絶対おさえておきたいSEO対策10のポイント
HubSpotまるわかり完全ガイド

デバイスの設定はパソコン、スマートフォン、タブレットなどに対しての出し分けができます。最近はスマホからのアクセスがBtoCでは多いため、スマホへの出稿を強めるケースも目立ちます。

試しに同じキーワード検索をスマホでおこなったところ、「腰痛」関連では同じ結果になりました。「リフォーム」関連では「リフォーム 見積もり」でパソコンより多くの広告が表示されました。なお「リフォーム スペル」では、やはり広告の表示はありませんでした。

検索ユーザーの意図が広告掲載に関連

リスティング広告の表示について、「軸となるキーワードが同じでも、広告が表示されないケースがある」ことが見えてきました。軸となるキーワードとは上の例だと「腰痛」「リフォーム」です。

もちろんマッチタイプやデバイスといった広告設定が細かくされていて広告が掲載されない、という可能性も考えられます。しかし、もう一つの可能性として「Googleが検索キーワードに応じて、広告の出し方を調整している」というのがあります。

実は先ほどの検索を複数回、またデバイスをいくつか変えておこなうと、広告の掲載結果は一律ではありませんでした。

たとえば「リフォーム 見積もり」で検索した際に広告が複数最上部に並ぶ時があれば、下側に表示されることもありました。「腰痛原因」で広告が表示されることもありました。このように必ずしも「こうした場合は広告が表示される、あるいは、されない」とは言いきれません。

傾向として、ユーザーの検索語句が「購買や申込みといったコンバージョンの意識が高いものを含む際は、広告が表示されやすい」ようです。

試しに次のようなキーワードで検索し、その際の広告表示を見てみました。

広告表示検証1

・「自動車保険 見積もり」

広告が上部に複数個表示。

・「自動車保険とは」

広告は表示されず。

広告表示検証2

・「英会話 マンツーマン」

広告が上部に複数個表示、下部にも表示あり。

・「英会話 教室」

広告が上部に複数個表示。

・「英会話 開きたい」

広告は表示されず。

広告表示検証3

・「ストレス 解消」

ショッピング広告が上部に複数個表示。

・「ストレス 原因」

広告は表示されず。

購買意欲に関係する広告表示

このように見ていくと、ユーザーが「買いたい」「申込みたい」といった購入意欲が高いと思われる検索の際に、広告が表示されやすい傾向があるようです。

Googleが広告設定だけを基準に掲載していないことは、公式にアナウンスされています。

Google にとっては、効果的な広告のみを表示することが重要なのです。実際のところ、広告がまったく表示されないこともよくあります。(Google「ユーザーを最優先する」より抜粋)

ユーザーは検索をさまざまな意図に合わせて利用しています。

純粋に情報を調べたい時もあれば、すぐに購入をしたいという場合もあります。Googleはその検索意図に合わせる形で広告を表示する、しないをおこなっているのは明らかなようです。

またその精度も、上の例で「自動車保険とは」という検索が調べものというのはわかりやすいですが、「ストレス 解消」だと解消方法を調べ、実際に解消してくれる商品を購入するところまでユーザーが望んでいる、と解析して掲載しているようにも見えます。

Googleは単純にキーワードで出し分けをしているのではなく、豊富なデータでユーザーが調べた後にどういったアクションを取るかまでを、すでに見越しているのかもしれません。

この精度はこれからも向上していくでしょう。

SEOとリスティング広告を上手に活用する

インバウンドマーケティングは主にSEO、自然検索から集客を図ります。

広告が敬遠されている現在において、これはかなり有効な手法です。しかし、特にBtoC領域においてはインバウンドマーケティングだけでは十分とは言えません。 なぜなら先ほど紹介したように、ユーザーはさまざまな意図をもって検索をおこなっているからです。

中には「すぐに購入したい」「比較検討をはじめたい」と考えているユーザーもいるでしょう。そんなユーザーに対しては情報ではなく、ダイレクトにコンバージョンに結びつくページを表示させるのが有効です。

以前から「ある程度ネットリテラシーが高いユーザーは、自然検索結果ではなく広告をクリックする」といわれてきました。すぐにでも購入したい、検討を進めたいといったユーザーにとっては自然検索結果の中から最適な情報を選び取るという手間をかけずに、広告をクリックする方が効率が良いのです。

つまりGoogleが自然検索と広告とをユーザーの意図に合わせて出し分けているように、マーケティング担当者もその二つを組み合わせて、有効に活用していくのが効果的です。

簡単にまとめてみましょう。

SEO(自然検索、インバウンドマーケティング)

<検索意図>

情報を探している、調べものをしている。

<コンバージョンまでの距離>

やや遠い。コンテンツマーケティングを活用して、多くの場合でナーチャリングを進めていく必要があり。

<対策すべきこと>

自然検索で上位表示させる。重要なキーワードに対しては、少なくとも1ページ目の三番目以内を狙う。コンテンツの質とともに、ナーチャリングしてコンバージョンまでに意識を高めていくためのシナリオと設計がカギ。

リスティング広告

<検索意図>

すぐにでも購入や申込みをしたい。具体的な比較検討を始めている。

<コンバージョンまでの距離>

近い。

<対策すべきこと>

広告の運用をきちんとおこなう。特にGoogle広告はデータに基づいた自動化が向上しているので、機械学習しやすい設定がなされていることが大切です。

ページでは商品やサービスに関する情報をきちんと伝えることが重要であり、購入や申込みの方法をわかりやすく、信頼できるようにしておくのもポイントです。提供している企業情報なども明確にして、ユーザーが申込みやすい情報設計とデザインを心がけます。

一点だけ誤解がないようにしてもらいたいのは、Googleの自然検索結果と広告出稿とはまったく関係がないということです。昔から「広告を多く出稿している企業のWebページが上位表示されるのでは」という声がありますが、それはあらゆる所で否定されています。

Googleは自然検索、広告を問わずその時のユーザーの意図に合わせた検索結果を返しています。ですからそれぞれに対してきちんとした対応をすれば、結果は自ずとついてくるでしょう。

まとめ

リードプラスではインバウンドマーケティングを推奨していますが、広告を否定しているわけではありません。

Hubspotを導入してインバウンドマーケティングとリスティング広告を組合わせる方法は実際のマーケティングを推進していくうえでは、非常に効果的です。この記事のポイントをまとめておきましょう。

この記事の主なポイント

  • Google は広告の表示をユーザーの検索意図に合わせて変えている。
  • ユーザーの幅広い検索意図に対応できるよう、SEOとリスティング広告の両方に取組むのが効果的。
  • 情報収集中、ナーチャリングが必要な検索ユーザーに対してはSEO、コンバージョンに近い検索ユーザーに対しては広告出稿を、というのが目安。
Webサイトのリニューアル時に 絶対おさえておきたい SEO対策10のポイント