ランチェスター戦略について企業が知っておきたい基礎知識

 2019.07.02  LeadPlus

企業は競合企業との営業・販売における競争において常に勝利を目指しています。そのためには闇雲に戦うのではなくある一定の理論や戦略が必要になります。そこで今回は、多くの企業が用いている「ランチェスター戦略」についてご紹介します。ランチェスター戦略とは、企業間の営業・販売競争に勝ち残るための理論と実務の体系です。この機会に自身のマーケティング戦略や経営戦略にお役立ていただければ幸いです。

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ランチェスター戦略とは

第一次世界大戦で、イギリスのランチェスターは「ランチェスターの法則」という概念を編み出しました。そして、第二次世界大戦ではその概念が進化し、「ランチェスターの戦略方程式」と呼ばれるようになります。これらは軍事的な分野の考え方ではあったものの、戦後にさまざまな分野へ応用されはじめました。ビジネスシーンはランチェスターの戦略がもっとも適用された、代表的な分野だといえるでしょう。

ランチェスター戦略はどのような戦略か

ランチェスターの戦略は「弱者の戦術」です。弱い立場にある組織が、どうやって強者に対抗するかの考え方を、軍事戦略を基にして編み出されました。

戦争やビジネスで共通しているのは、「戦闘力」が高い組織は圧倒的に有利な立場をとれるという点です。大企業が同業種で中小企業を席巻しているのも、戦闘力において巨大なアドバンテージを得ているからこそ。そこで、ランチェスターの戦略では戦闘力の定義に着目しました。単純な戦闘員の数で戦闘力が決まるのではなく、個人の質を高めたり、戦い方を工夫したりすることが重要だと気づいたのです。

たとえば、戦闘力が100人の部隊があったとします。彼らが全員、剣で武装していると仮定した場合、100人の素手で戦う部隊にはほぼ確実に勝てるでしょう。けれども、同じく100人の部隊を相手にするとしても、相手が鉄砲を持っている部隊なら到底対抗できません。また、まったく同じ性能の剣で武装した相手と戦うにしても、相手の数が200人であれば、よほどのことがない限り負けてしまいます。つまり、自分の戦力を冷静に把握し、戦う相手を選ばなければ戦闘自体が無駄になるのです。

ランチェスター戦略の歴史

第一次世界大戦でイギリス軍の戦闘機を開発していたF・W・ランチェスターは、研究過程で大きな発見をしました。彼は、出撃する戦闘機の量と質から、敵軍に与えられる損害を割り出せることに気づいたのです。ランチェスターの発見に、イギリス軍は衝撃に包まれました。なぜなら、それまでの軍事戦略とは、古い精神論や哲学に支配されていた部分が大きかったからです。ランチェスターがおこなったように、戦争を数学や統計学によって解明しようという試みは世界初でした。

第二次世界大戦になると、イギリス軍はランチェスターの理論をさらに掘り進めていきます。コロンビア大学の協力を得ながら、軍は戦闘機をやみくもに出撃させても戦果を得られないのだと結論づけました。戦闘機の数と質を踏まえたうえで、最前線へ飛ばして直接的な戦闘をおこなわせたり、敵軍の後方支援を攻撃して戦闘継続を困難にさせたりと、それぞれの部隊に適した役割を与えることが重要であるとの考えに達したのです。ランチェスターの理論は軍部に受け入れられ、イギリス軍は効率的に戦場を制していくようになります。

戦後、ランチェスターの戦略方程式からなったランチェスター戦略は、カナダのフォルクスワーゲン社の世界進出において応用され、大成功に導きました。自動車産業において、決して主流ではなかったカナダの会社が拡大していくために、「弱者の知恵」としてのランチェスター戦略がおおいに力を振るったのです。現在においても、多くの経営者やコンサルタントがランチェスター戦略を研究しつづけています。

ランチェスター戦略を理解したほうがよい企業とは

企業の業種や規模にかかわらず、ランチェスター戦略を取り入れて損することはありません。特に理解するべきなのは「1位以外の企業」です。ランチェスター戦略では、業界内のシェア率がもっとも高い企業を「強者」と認定し、それ以外を「弱者」とみなしています。そして、弱者が強者にどう対抗していくか、という観点から理論を展開します。トップ企業と、それ以外の企業との間に大きな差がついてしまった業界は、ランチェスター戦略を応用するのが得策です。

次に、「ターゲット層が曖昧な企業」も、ランチェスター戦略へと切り替えていくべきでしょう。多くの企業が経営戦略において「幅広い層に訴求」「誰もが愛してくれるように」といった方針をとりがちです。ただ、その戦略をとってもいいのは、一部の知名度が高い企業に限られます。中小企業が不特定多数のターゲットを狙っても、大企業には太刀打ちできないでしょう。ときには、大企業の息がかかっていないニッチなターゲットを見つけて、商品を展開することも大切です。ランチェスター戦略は、こうした中小企業の方針を支える礎になりえます。

ランチェスター戦略を理解するためのポイント

軍事の分野からビジネスシーンに応用される過程で、ランチェスター戦略は少しずつ変化を遂げてきました。社会人がランチェスターの戦略を理解するには、根幹をなす「第一法則」「第二法則」「マーケットシェア」の3つを深く学ぶ必要があります。

弱者の戦略(第一法則)

ランチェスターの戦略は、「弱者の戦略」という言葉で語られます。ただし、それもランチェスター戦略のほんの一部でしかありません。正確には、弱者の戦略としての考えが説かれているのは「第一法則」にあたります。第一法則においては、戦闘力が「質×量」の公式で求められます。ビジネスシーンでの戦闘力とは、「企業力」のことと考えていいでしょう。つまり、社員一人ひとりの資質と、社員数をかけた結果が企業力になるのです。

この公式にあてはめれば、そもそもの社員数が多い大企業は、スタート地点からして圧倒的有利にあるのが目に見えてわかるでしょう。しかし、中小企業にも対抗策があります。量で劣るのであれば、質を高める方向に切り替えればいいのです。社内環境を見直し、業務を効率化できるポイントを探りましょう。必要であれば、リモートワークを認めるなど、社員のポテンシャルを引き出せる労働環境を提供することも考えます。できる限り戦場=労働環境を整えておけば、局地戦になった際、大企業との数のハンディキャップを埋められます。ライバル社が苦手な部門をリサーチし積極的に進出するなど自社が対抗できる「戦える場所」を見極め整えましょう。

強者の戦略(第二法則)

ランチェスター戦略は、強者が弱者を圧倒するための考え方でもあります。それを説いているのが「第二法則」。すでに量で勝っている企業が2位以下の弱者を寄せつけないための方法に触れています。基本的な第二法則の理論は、「数にまかせてシェアを確保する」こと。社員の資質が同等以上なら、数で勝る組織が成功するのは自然な流れです。そのため、強者である大企業は、中小企業のようにニッチなマーケティングを好みません。大きな市場を相手にした戦略を展開する傾向にあります。

たとえば、中小企業の「得意分野を奪う」のは第二法則の原則といえるでしょう。中小企業がなんらかの成功を収めたとき、大企業はあえて同じ分野に進出します。そして、中小企業の経営戦略を真似て、同じターゲット層に訴求します。同等のクオリティが保証されているなら、ターゲットはより実績のある企業の商品を信用するでしょう。そのほか、大企業は大規模な営業をおこなったり、中小企業のキーマンを好条件でスカウトしたりと、強者のアドバンテージを存分に活かすのがランチェスター戦略の常套手段です。社員数が多く、質もともなっている企業は第二法則に基づいて経営を進めていくべきなのです。

マーケットシェア理論

第一法則と第二法則、いずれに則って経営をするのかは、ランチェスター戦略のカギです。弱者でありながら第二法則を参照しても上手くいきません。その逆もしかりです。そこで、自社の市場地位を明確にする基準として、「マーケットシェア理論」が採用されています。マーケットシェア理論はマーケティングコンサルタント・田岡信夫によって具体的な数字が設定されました。そこでは、業界内で自社のシェア率がどれくらいなのかを7段階に分けられています。それぞれに合った戦略を考えていくことで、企業は実践的な経営プランを生み出せるでしょう。

マーケットシェア理論では、「73.9%以上」の占有で、「独占企業」になれると説きます。独占企業の地位は安泰であり、よほどのことがない限り2位以下に逆転される恐れはありません。次に、「41.7%以上」のシェア率でも、立場は安定します。大企業であれば、当面は41.7%以上のシェアを目指すのが目標となります。

なお、「26.1%以上」「19.3%以上」「10.9%以上」の企業も十分に有望株です。業界内で影響力を持ち、トップクラスの仲間入りを果たす可能性もまだまだ残されています。しかし、「6.8%以上」では、市場にほとんど影響を与えていないとみなされており、この数字に達さない企業は、マーケットからの撤退を考えたほうがよいでしょう。「2.8%以上」ともなれば、ランチェスター戦略をもってしても、生存は難しくなります。

ランチェスター戦略の事例

強者の経営プランとしてのランシェスター戦略が活用されているのは、IT業界。その代表となるのがAppleです。同社では新商品・サービスの開発を急ぎません。むしろ、ライバル社のリリースを意識的に待っていることすらあります。この戦略を「ミート戦略」といいますが、そのもっともな例としてあげられるのが、iPodです。SONYがフラッシュメモリーを利用した小型オーディオプレイヤー「ウォークマン」を発売した2年後に、改良を加えて発売されました。ライバル社が新商品を売り出してから、弱点を克服した同ジャンルの商品を開発し、宣伝する。技術力、宣伝力、営業力のすべてにおいてライバルを凌いでいる大企業だからこそ、このような戦略がとれるのです。

一方、弱者の生存方法としてランチェスー戦略を取り入れたのが、婦人下着メーカーのトリンプです。単純な価格競争でいえば、下着業界は大企業に勝てません。新商品をどんどん開発しても、大企業にアイディアを奪われてしまいます。そこで、同社がとったのは、「差別化戦略」と「接近戦」です。従来、下着業界では、機能やつけ心地、ボディラインの美しさなどに訴求ポイントを置いて商品を販売するのが通例でした。そこに独自の視点、「ネーミングのユニークさ」を付け加え、他社との差別化を図ったのです。そのほかにも、非売品の選挙用「投票率UP!ブラ」、サステナブルを広めるための「マイ箸ブラ」など、続々と発表。これには各マスメディアが取材に駆けつけ、広告費換算で27億円ともいわれる圧倒的なメディア露出を実現しました。また、差別化は商品のみにとどまらず、「早朝会議」や「ノー残業デー」など、今ではお馴染みの労働環境の改善をいち早く取り入れるなど、話題に事欠きません。また、販売員の教育を徹底し、現場におけるお客さんとの「1対1」を制することに力を注ぎはじめます。下着売り場では、大企業のブランド力も及びません。販売員のトークスキルが上がったり知識が増えたりすることで、局地戦で勝利できるようになったのです。

とはいえ、弱者の戦略では「価格競争」も重要なポイントです。シェア率の少ない企業にとって、大企業に価格競争を挑むことは、一見、無謀に思えます。しかし、すぐには利益が出なくても低価格で新規顧客さえつかめれば、業界に新しい風を呼び起こせます。それをおこなったのがソフトバンクです。同社がモバイル業界に参入した際、業界内はNTTドコモが圧倒的シェアを誇っていました。そんな中、打ち出したのが「低価格」路線です。戦略が功をなして顧客は増加、その後は学生向けサービスやiPhoneの導入など、新サービスを提供しつづけ、2014年、ついに国内モバイル市場のトップに躍り出ました。自社の顧客から信用を得られれば、のちにリリースする商品の利点、サービスの斬新さなどを伝えやすくなるよい例です。

ただし、こうした差別化は、弱者が強者に悟られないよう準備するからこそ効果を発揮します。事前に、強者側が商品・サービス内容を耳に入れてしまうと効果は半減するので気をつけましょう。強者は「ミート戦略」によって、弱者の作戦を無効化できます。ランチェスター戦略を実行するときは、常にライバル社の動向も見極めなくてはなりません。

そもそも、ランチェスター戦略は軍事目的で編み出された理論です。敵を意識することで、自社を次のステージへと導いてくれるでしょう。ビジネスで大切なのは、現実的な目標を設定し、企業のポテンシャルを余すところなく注ぎ込むことです。大企業と真正面から戦うのではなく、違いを生み出して新しい戦場を作り出すようにしましょう。ランチェスター戦略は、企業に眠る力を知るきっかけを与えてくれる経営戦略なのです。

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