【2018年下期】マーケティングオートメーションの傾向を読み解く

海外製、日本製を問わずマーケティングオートメーション(MA)ツールが国内で多く出回るようになりました。数年前には考えられなかったことですが、ようやく一般化されてきた印象です。

そして、導入した企業から「これまでのMAツールではうまくいかなかったので変えたい」という声、「これからMAツールを導入したいけど何が良いか」というお声をリードプラスではお聞きします。

MAツールは、現在、多くのプレイヤーが凌ぎを削っている状況で日進月歩の世界です。この記事ではこうした動きの早いMAツール市場の動向をご紹介し、昨今のMAツールの傾向を追っていきたいと思います。

アドビ、マルケトの買収を発表

MAツールの草分け的存在であったマルケト(Marketo)が、アドビに買収されたのは大きなニュースでした。数々の買収の噂があったマルケトでしたがようやく落ち着いたというのが正直なところでしょう。

アドビといえばAdobe Experience Cloudというスタックで有名ですが、これは主にBtoC企業をターゲットにしていました。このAdobe Experience Cloudにマルケトが加わることでBtoB市場にもアドビテクノロジーの利用が可能になることは大きな進展になりそうです。

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いよいよマイクロソフトも参入

マルケトはマイクロソフトに買収されるのではないかという噂もありましたが、最近ではマイクロソフトがマーケティングの領域にも製品を投入しています。

彼らが提供するビジネスソフトウェアであるMicrosoft Dynamics 365は、今までDynamics 365 for Finance and Operations(ERP)やDynamics 365 for Sales(CRM)というスタックで企業のバックオフィス業務を支えていました。そこにDynamics 365 for Marketingが組み合わさることで企業業務全体をサポートできるスタックへと生まれ変わりつつあります。

このようにマーケティングからセールス、バックオフィスまで提供できる企業は今までオラクル(Oracle Marketing Cloud, Oracle Sales Cloud, Oracle ERP Cloud)のみでしたが、ここにマイクロソフトが参入したことは大きな動きと言えるでしょう。

また、SalesforceはPardotがあるのにMicrosoft Dynamics CRMは、今までマーケティング機能がなかったのでそういう意味での進展もあります。

弊社が確認したところイベントやセミナーなどを多く実施する企業では、Dynamics 365 for Marketingは有効という印象があります。SFAやERPでDynamics 365を導入している企業は検討して見てはいかがでしょうか。

MAツール、二つの方向性

さて、最初はニュース的なものをご紹介しましたが、MAの傾向を読み解くために、大きな流れを整理したいと思います。

最近のMAツールは、大きく二つの方向性があります。

  1. いろいろな外部ツールと連携し、機能をアップさせていくもの。
  2. 一つの製品、あるいは製品シリーズにより網羅的に機能を提供するもの。

前者については、たとえば「Marketo(マルケト)」が数年前から、連携できるツールをどんどん増やしてきました。

連携の強化

MAでできることはMA、それ以外は外部ツールを連携させることを前提にするものです。この連携に力を入れているMAツールは海外製品では一般的です。例えばHubSpotではHubSpot Connectという連携ソリューションを用意しています。数百ある業界リーダーとのシームレスな連携が可能になります。

日本製のMAで積極的に連携に動いているものだと「SATORI(サトリ)」の名前がよく聞かれます。先日もマーケティング機能を重視したチャットボット、「SYNARIO(シナリオ)」との連携が発表されました。この連携は役割がハッキリしていて、匿名段階のアクセスをSYNARIOで、情報を獲得してリードになって以降のナーチャリングをSATORIで、というふうにそれぞれが得意とする担当領域を組み合わせとしています。

カスタマージャーニー全体を考えた場合にマーケティングだけでは閉じられないので連携は必要不可欠と言えるでしょう。

統合の強化

もう一つの大きな流れは、一つのツールまたは自社の製品群ですべてをまかなうというものです。

これはMAツールという呼び方をすると実態と違うイメージになるので「プラットフォーム」という呼び方をしたいと思います。プラットフォーム内に、MAの機能も含んでいるイメージです。

例えば国産では「b-Dash」が統合プラットフォームに力を入れています。分析と施策実行に必要な機能を一定以上のレベルで備えているとともに、ベースがプライベートDMPなので他にデータを蓄積する場所などは不要といったメリットがあります。

また、海外製品も統合に力を入れています。

製品群で多くの機能を網羅しているのは、「Salesforce(セールスフォース)」の知名度が抜群です。Pardotは、SalesforceのSales Cloudとの相性が良いことは容易に想像がつくかと思います。このような製品構成でスタックを提供する方向性です。また、CRMで有名な「Zoho(ゾーホー)」も、一つのシリーズですべてが揃うことを売りにしています。先ほどご紹介したマイクロソフトやオラクルも統合戦略と言えるでしょう。

HubSpotの動向

このような流れはHubSpot(ハブスポット)も同様です。HubSpotというとインバウンドマーケティングを実現するためのマーケティングプラットフォームという印象が強いかもしれません。

しかし、最近ではHubSpot Growth Stackというプラットフォームを推進しています。HubSpot Growth Stackは、マーケティング、営業、CRM、顧客のための統合プラットフォームの総称です。これらは、インバウンドマーケティングのためのMarketing Hub、営業活動を支援するSales Hub、顧客管理のためのCRM Free、そして、顧客サポートを支援するCustomer Hubで構成されます。このように「Hubspot」は、MAではなくカスタマージャーニーを統合的に支援するプラットフォームとして進化しています。

最近の特徴としてHubSpotは、CRMを無償で提供しているため、これを手始めに導入を進めていく企業が増えています。ちなみに、先日開催されたHubSpotの年次イベントでは動画のホスティング機能、Facebook Messengerとの連携など、さまざまな新機能が発表されています。

データとの関係

デジタルマーケティングにおいて、今やデータの活用は欠かせません。前項であげたMAについても、データをどう利用できるかが大きなポイントになります。

先ほど紹介したSATORIやb-DashはMAだけという機能ではなく、ベースはDMPです。そのためこれらに対して他にDMPを準備して連携させると、二重コストになる場合もあります。

しかし、それらのDMPでは満足できなければ(データ量が多い事業者など)、DMP(またはDWH)を別で持ち連携するというケースを考慮するのが一般的です。

このあたりはすでにデータの基盤が整っている場合はその仕様を、これからデータ基盤を作りながらツール導入も検討する場合には、どれくらいのデータ量になるかなどをきちんと調べ、最適なインフラ構成になるようにしていくことがポイントになるでしょう。

MAツールの他のトレンド

前章でMAを二つの方向性をご紹介しましたが、それ以外のトレンドに関してもご紹介します。

たとえば「Sitecore(サイトコア)」は、MAの機能を持ったCMSですし、同タイプでさらに上の製品として「Adobe Experience Manager(アドビエクスペリエンスマネージャー)」があります。これらは基本がCMSなので、MAの機能を重視しての導入ではないケースも目立ちます。

また営業部門、あるいはWebとデジタルマーケティング部門が分かれている場合は、そうした組織の関係から別のMAツールが選択される可能性も大きいようです。

導入で注意したいこと

さまざまな情報をもとに、MA導入で注意したいポイントを紹介していきましょう。

機能が多すぎないか、使いこなせるか。

導入しているMAツールに一定の評価はしているものの、使っていない、あるいは使いこなせていない機能が多いという声があります。

最近のツールは多機能を重視していますが、実際にはすべての機能は使われていません。

ツールによっては必要な機能やプランが細かく分かれて提供されていますので、まずは現状で必要なものから入れて、徐々に別の機能を加えたり上のプランへアップデートするのもいいでしょう。

同じ機能のものが複数導入されている。

多くのツールでは、機能がだぶるものがあります。

たとえば個々人の分析は多くのMAが得意とするところですが、最近はユーザー単位の分析を専門としたツールも多く出ています。

MAの分析、個々のユーザー分析を両方導入して、内容を見ていくとほとんど変わらなかったとういうケースも目立ちます。

これはMAと接客ツール、メール配信ツールなどについても同じです。

一つのツールに一つの機能という専門のものは少なくなっていますので、「そのツールがどこからどこまでができて、何が足りないか」をよく見極めましょう。

また複数のツールを導入する際は、連携がスムーズにできるかもよくチェックしたいものです。

部門間の連携がうまくできていない。

デジタルマーケティング以外の営業、Webの制作運営、システム、あるいは広告宣伝部や広報など、MAは導入後にさまざま部署にまたがって活用されます。

そのため部署間の連携ができていなかったり、仕事の中身を導入窓口となる担当者がきちんと理解できていないと、運用でつまずく可能性が大きくなります。

MA導入をきっかけに部署間の連携がスムーズにできるようにしましょう。

そのためにまずは、担当者がビジネスの理解をきちんとすることも必要です。

社内だけでは調整が難しい場合には、外部のパートナーの力も借りて進行しやすくするといいでしょう。

コンテンツがない、作れない。

ここでいうコンテンツにはWebサイトだけでなく、メルマガなどのプッシュ型のチャネルも含みます。

MA導入で意外と不安や不満の声があがるのがここです。

  • 「掲載できるコンテンツがない」
  • 「継続して作るリソースがない」

などです。

しかし実際には、社内にいると気づいていない価値ある情報が意外とあるものです。

このあたりについても外部の目から、客観的に見てもらうと思わぬ発見があるかもしれません。

またやみくもにコンテンツを追加するのではなく、MAの場合はスコアリングやナーチャリングを意識した構成やコンテンツの追加が必要です。これらについても専門的な視点でアドバイスをもらうと効果的です。

まとめ

MAの使いこなしに関しては、大きく次の三つに分かれるのが現状です。

  • メール配信など一部の機能を使い、効果が実感できている。
  • 運用はしているものの、効果は実感できていない。頭打ち。
  • ほとんど使えておらず、他ツールの入れ替えも含めて再検討中。

もちろん中には「完全に使いこなせている」という声もあります。

逆にこれから導入したいと考えているという企業もあります。

MA(今回、プラットフォームとして分類したものも含める)がどんなに優れていても、分析をしやすくしたり施策の実行を自動化してくれるツールなのは変わりません。その大前提としてしっかりとしたシナリオの作成が必要不可欠であり効果は大きく変わってきます。

つまり、マーケティング戦略や情報システム、業務プロセスのあるべき姿が大前提にあり、その上で変化の激しいMAツールの最適な選定を行うことが重要なのだと思います。

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