Webコンテンツもマンガの時代に突入!? ユーザーに響く理由と事例

Webコンテンツとして意外と見落とされがちな手法が、「マンガ」です。マンガは日本が誇るべき文化の一つ、という意見も多くありますが、Webでもその傾向が見られるようです。ここではその理由、具体的な事例について紹介していきます。

Webコンテンツに見られるマンガ

定番

Web担当の方なら、下記のマンガコンテンツを目にした事があるでしょうか。

Web担当者の学校に行ってみた/【漫画】Webのコト、教えてホシイの!

参考)Web担当者Forum:Web担当者の学校に行ってみた/【漫画】Webのコト、教えてホシイの!

これはWeb担当者必読のサイト、「Web担当者Forum」に掲載されたものです。「Webのコト、教えてホシイの!」というシリーズで、時おり掲載されています。マンガと聞いて思い浮かべるのは、多くがこうしたコマ割りがされたイメージでしょう。実は他にも種類がありますので、少し見ていきましょう。

挿絵 

次いで、かなりインパクトがあるものを紹介します。

沈黙のWebマーケティングWebマーケティング

参考)CPI:沈黙のWebマーケティングWebマーケティング

レンタルサーバーの「CPI」のコンテンツとして掲載されていた、「沈黙のWebマーケティング」という作品です。書籍化もされたので、書店で目にした絵柄だ、という方も多いのではないでしょうか(私もそうでした)。またこちらは続編も作られましたので、やはり高い支持を得ていたのがわかります。

さまざまバリエーション

少し変わったバリエーションについても、紹介しましょう。

ブルガリ

参考)PR TIMES:ブルガリ ジャパン株式会社のプレスリリース

世界的なラグジュアリーブランドであり、多くの人が憧れを持つ「ブルガリ」も、マンガの手法を取り入れています。 

これは絵(アート)であってマンガではないのでは、という印象を受ける人も多いでしょうが、ショーウィンドウを飾るこの一枚絵も、マンガという風にも認識されます。 
※「マンガデザイナーズラボ」という会社が手掛けています。

またリアル店舗での取り組みがWebとどう関係があるのか、と疑問を持つ方も多いでしょう。これについては、Instagramハッシュタグ:#JEWELSNOTFLOWERS)を中心に、ソーシャルメディアと連動させた企画となっています。

私自身は、マンガというWebコンテンツの手法についてはもちろん以前から知っていました。しかし今回記事として書こうと思ったキッカケは、このブルガリの事例を知ったからです。

大ブランドが採用するならば、マンガにはやはり高い価値があるのではないか。コンテンツとしての魅力があるのではないかと思った次第です。 

それでは、考察を進めてみましょう。 

Webサイトのリニューアル時に絶対おさえておきたいSEO対策10のポイント
バイヤーペルソナテンプレート

マンガのメリット

良い内容も、受け入れてもらえなければ・・・

前提として、Webコンテンツで大切なポイントを紹介しましょう。それは、「ユーザーに受け入れてもらいやすく表現する」という事です。

例えば健康な日常生活を送るポイントが書かれた、非常に有益な「論文集」があったとします。いかがでしょうか。既に論文集と出た時点で、読む気が失せてしまったのではないでしょうか。

これはユーザーが受け入れにくい状態です。これを「いかに受け入れてもらえるようにするか」というのが、コンテンツ担当者の腕の見せ所と言えます。

その手法として大きな力を発揮するのが、マンガという表現手法です。最初に紹介をした「沈黙のWebマーケティング」の企画、制作者であるウェブライダーの松尾茂起さんの言葉を借りると、「“マンガを読みづらい”という人はいない」だそうです。

検索エンジンはどう見るのか 

ただし熱心なWeb担当者であれば、こうした疑問が浮かんで、すぐには頷けないはずです。だって絵にしたら、SEO的にマイナスじゃないですか。

その通りです。Webコンテンツは検索エンジンにも受け入れてもらわなければいけない、とい命題もあります。 

ここで今一度、検索エンジンについて考えてみましょう。Googleは「質の高いコンテンツ」の提供を呼び掛けていますが、それは誰にとって質が高いものかを思い出してみましょう。常に「ユーザーにとって」のはずです。

テキストだらけの論文は内容的には質が高いでしょうが、ユーザーに受け入れられやすい表現手法となっている、という意味では不十分です。 

しかし絵よりテキストの方が・・・という反論はなおも出るでしょうが、Googleがテキストのみを重視するというのも、古い情報になりつつあります。画像の中を解析するという技術が進んでいますし、ユーザーのアクセス状況や滞在時間といったデータを、AIを絡めて検索順位の決定に取り入れている、というのも最近の動きです。

今はまだテキストを中心にしたコンテンツの方が強くても、ひと昔前までテキストで埋め尽くされたページが上位表示されていたのが少なくなってきたように、その優勢も時間の問題かもしれません。本道から外れた、検索エンジンの方だけを向いたコンテンツづくりは、全くオススメできません。 

ちょっと実験 

ここで、ちょっとした実験をしてみましょう。次の文章を読んでみてください。

まず私の事を少し紹介します。仕事はマンガの原作者です。そのために、特別な知見のない事についても、書く機会が多くなってきます。ですので時折、困った事にも出くわします。先日、編集さんと食事をしている時もそうでした。「Webマーケティングのマンガ原作をやってるんだから、そろそろ本気で勉強してみたら?」と言われたのです。私は「えっ、だって俺はただの原作者じゃないですか」とすぐさま返しました。

これは最初に紹介した、「Webのコト、教えてホシイの!」の内容の一部を、テキスト化したものです。たったの一コマを対象にしたものですが、これだけの文章量になり、しかもそのコマの内容について、すべては伝えきれていません。

さらに言えばこの原作者の感情や、やり取りの雰囲気についても、あまり伝わって来ないのではないでしょうか。そんな事を考えながら、マンガを見てみてください。テキストの対象にしたのは、向かって右下のコマです。

瞬時に打ち合わせの雰囲気を感じ、作者の困惑ぶりも伝わってきたのではないでしょうか。また食事がとり鍋という、話の本質ではないけれど、印象に残るお茶目なエッセンスも盛り込まれています。

あれだけ長いテキストを用いても、これが「今回の企画の立ち上がりのキッカケとなった事」「相手の編集者の素性」については語られていませんでした。しかしマンガであれば、こんなにた易く多くの事を伝えられます。

メリット

このようにマンガにはユーザーの心理的なハードルを下げ、頭にスラスラ入って来る抜群の効果があります。この理由を、もう少し掘り下げてみましょう。

上で「(テキストでは伝えられていない)打ち合わせの雰囲気、作者の困惑ぶり」も、マンガでならば伝えやすい、という旨を書きました。ここが重要なのです。こうした印象は、ユーザーの共感を呼び起こしていきます。

マンガの中のキャラクターの動きと、自分の感情とがリンクしていき、情報に対して臨場感を持つ事ができるのです。マンガの大きなメリットはこの、「感情へのアプローチ」にあると言えるでしょう。

海外にも伝わっていく

Webコンテンツとしてのマンガが最近注目されているのは、「世界にも通用する」というのもポイントになっています。少し前から政治家も盛んに「マンガは日本の文化。世界に輸出」という事を言っていますが、人間の感情にアプローチするものですから、国境を越えても力を発揮します。

NHK WORLD MangaMe

参考)NHK WORLD MangaMe!

この事例のようにNHKも、海外向けのコンテンツにマンガを取り入れています。

もちろんメディアだけでなく、海外展開を積極的に推し進めていこうとしているメーカーも、マンガを使い現地へのアプローチを積極的に行っている所が出て来ています。

海外への輸出だけでなく、訪日のインバウンドでも、マンガは力を発揮していきます。旅行に際して情報は、出発前に多く取っていきます。

インターネットは国境を越えていますから、日本にやって来る外国人へのアプローチは、事前に行っておく必要があります。インターネット+マンガという接触ツールを持っているかどうかで、訪日ビジネスの成功率も大きく変わってくるかもしれません。

発展途上の分野

かなり進化を遂げている日本のマンガですが、Webにおいてはまだ発展途上の面があります。最初に紹介した事例は人気のコンテンツばかりですが、「Web担当者Forum」のものがスマホでもそのまま快適に読めるかというと疑問です。

スマホからのアクセスが少なめのBtoBであればまだしも、BtoCのビジネスでこの形での提供だと厳しいでしょう。このように閲覧するデバイスに適したマンガの表現方法も、考慮していく必要があります。

「沈黙のWebマーケティング」は、挿絵という見方もできます。文字とイラストのバランスや、ユーザーがよりコンテンツにのめり込めるようにしていく挿入位置を決めるなどが、ポイントになって来るでしょう。

ちなみに昔、仮面ライダーの漫画家、石ノ森章太郎がこうした絵と文章とで構成されたマンガを、紙の誌面上で漫画として展開させた事がありました。その時はあまり大きな反応は得られなかったようですが、時代も変わりインターネットというプラットフォーム上でどう評価されるのか、気になるところです。

「ブルガリ」のようにソーシャルメディアとの連動も、デジタルマーケティング戦略の中で考えると面白い事例です。補足としてなぜこれがマンガと言えるのかをもう少し考えてみると、江戸時代の浮世絵を思い出してみると良いでしょう。

あれは近世ではマンガとして捉えられていましたので、ブルガリのショーウィンドウの一枚絵がマンガとしても通るのは、実は当たり前なのです。マンガの表現手法そのものが時代によって変わります。特にデジタルと絡んで、多様なものが生まれてきそうです。

まとめ

Webコンテンツの中におけるマンガの有用性について、実際の事例も挙げながら紹介して来ました。

マンガはまずは「企画力」、そして「表現力」です。前者の企画については、自社のビジネスを一番理解しているWeb担当者が中心となって考えていくのがベストでしょう。後者に関しては専門の手法が多く必要ですから、その道のプロに相談して、最適なものを取り入れていくと良いでしょう。

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