BtoB(一部BtoCも)であれば顧客に対し最終的なクロージングを行うのは営業の仕事であり、いわば企業のストライカーとも言えます。しかし、そのストライカーが決定力不足では当然売上げ向上にも繋がりませんね。
いくらバックオフィスなどの守備を強化したり、くさびとなるパスを出すマーケティングが奮闘しても結局は決定力が最後にものを言うのです。
そんな営業を支援するシステムが営業支援システム(SFA)なのですが、未だ「SFAって何?」という方が多いようです。2014年と少々古いデータですが、インターネット事業を手掛けるNECが行った調査によるとSFAを導入している企業は全体で37%、試験的な導入(一部導入)になると47%に上ります。
※2014年6月NEC WISDOMメンバーズ対象に実施。有効回答:365
詳しく知らないだけで意外と多くの企業で導入が進んでいるので、もしかすると皆さんの企業でも潜在的なニーズがあるかもしれません。
今回は、そんなSFAについて解説していきます。
営業支援システム(SFA)とは
今でこそSFAは一つのシステムとして広く浸透していますが、そもそもは“営業を科学的に分析し支援するための概念”です。ちなみにSFAという言葉自体は「Sales Force Automation」の頭文字を取ったものです。
SFAは1990年代に提唱され始めましたがその起源などは不明であり、当時ブラックボックス化されていた営業情報の可視化という課題の解決から生まれたとされています。そんな中、1993年に創業されたシーベル・システムズ(2005年に米Oracleが買収)がSFAアプリケーションをリリースしたことで、米国を中心に爆発的に普及しました。
海外のトレンドが数年遅れで日本に上陸するという例に漏れず、1990年代後半から国内でもグループウェアと共に普及が始まりましたが、当時の伸びゆきは悪かったようです。
理由としてはまず、日本は欧米ほどネットワーク環境が整備されていなかったこと。そしてITスキルを有した人材に乏しかったことが挙げられます。
しかし最も大きな理由はおそらく、それまで「勘」「根性」「経験」で築き上げられてきた日本の営業文化に受け入れられなかったのでしょう。その後は日本企業のグローバル化が進んだことと、SFAの進化により現在の普及に落ち着いています。
CRMとの違い
SFAはCRM(顧客管理システム)とよく混同されがちですが、機能面などに明確な違いあります。
SFAの得意領域
- 顧客データ管理(三層管理)
- 売上げなどを可視化するレポート機能
- 全体でタスクを共有できるToDo機能
- 見積書・請求書などの帳票類作成機能
- 日報作成・管理機能
CRMの得意領域
- 顧客データ管理(二層管理)
- 既存顧客・見込み客へのメール配信
- アンケートフォームによる満足度調査
- セミナー・イベント管理機能
- 顧客対応を中心としてCTI機能
上記の違いを見てみるとSFAの方が営業に特化したシステムであり、CRMは全社的に顧客情報を管理するためのシステムと捉えることができます。事実SFAは「売上げの最大化」そしてCRMは「顧客満足度向上」を目的に導入されることが多いです。
しかし最近になって両者の境界線が曖昧になりつつあります。全ての機能を包括してサービスのリリースが盛んになり「SFAを包括したシステムがCRM」という傾向が強くなっているようです。
また、CRMによってはマーケティングプラットフォームのHubSpotと顧客デーたを連携することができます。HubSpotについてまとめたEブックをご準備しています。ご興味があれば合わせて以下をご確認ください。
名刺管理システムも一種のSFA?
営業の現場において最近普及され始めた名刺管理システムですが、テレビCMなども放映されていることからニーズが急速に拡大しています。そして名刺管理システムもSFAの一種として捉えている企業が多くなりました。
というのも、実際に各サービスを見てみると名刺管理以外にも案件管理やToDo機能などを備えているシステムが多く、簡易的なSFAを提供していることが多いんです。
むしろ名刺管理システムをSFAとして利用する方が「シンプルな機能と操作性で使いやすい」といった声が増えています。
SFAのメリットデメリット
メリット
商談のステージを管理することで次のアクションを明確に示す
SFAの特徴と言えば顧客データの三層管理であり、顧客情報と案件情報の二層管理に加え商談情報を管理することができます。
商談情報が管理される以前は「勘」「根性」「経験」がものを言う世界だったのですが、現在では情報をもとに管理がなされているので次のアクションを明確に示すことが可能となりました。
これにより営業活動の効率化やセールスのタイミングなどを正確に掴むことができ、利上げの最大化に貢献しています。
ナレッジが蓄積することでベストプラクティスを生み出せる
案件情報や商談情報をシステムに蓄積していくことで、そこには自然と営業ナレッジが蓄積されていきます。しかも、好きな情報を簡単に抽出することができるので非常に効率的です。
こうしたナレッジを分析することで営業のベストプラクティスを生みだし、部全体で共有すれば営業スキルの底上げにもつながるメリットがあるのです。
営業日報をシステムに組み込むことで業務効率化が促進する
SFAの基本システムである営業日報もまた、業務効率化に貢献する機能の一つです。これまではExcelで作成した日報を印刷して上司に提出するといったケースが多かったでしょうが、システム上で報告を行うことで印刷と提出の手間を省くことができます。
もしもSaaS型(※1)ならば上司は外出先から日報を確認することができるので、場所と時間を問わず円滑なコミュニケーションが可能です。
その他タスクやスケジュール等も共有できるので、営業活動がより加速します。
※1:SaaS型とは「Software as a Service」の略であり、インターネット経由で利用するシステムやサービスを指す。オンラインストレージなどが代表的。
デメリット
導入・ランニングコストがかかる
無料で利用できるオープンソースSFAはあるにはあるのですが、やはり本格的に利用するとなるとパッケージかSaaS型を導入することになると思います。
パッケージ型は自社サーバの設置やインストールなどの費用がかかり、導入だけで数百万円かかることは珍しくありません。また、サーバやシステムの管理・運用費などもかかります。
SaaS型では初期費用が数万円程度と安価なので導入費こそかからないものの、ユーザー数に応じた月額料金が発生します。
長期的な目線で見るとパッケージ型のコストを上回るケースもあるので、導入後の利用完了を考慮した上でトータルコストを比較することが大切です。
SFA導入でありがちな失敗パターン
1. 営業に嫌われ使用されないシステムとなった
SFAはブラックボックス化されていた営業情報を可視化するためのシステムなので、現場の営業マンからすれば現状より多くの情報を上部に提出することになります。
ここで営業マンが考えるのが「業務負担が増加する」と「今後評価が厳しくなる」というこです。
現場からすれば業務負担が増加することと評価が厳しくなることはご免被りたいことなのですが、会社の方針とあらば従うしかありません。しかし次第に使用されなくなり、リスト管理のためのシステムとなってしまったというパターンは非常に多いのです。
SFA導入の目的と業務効率化の指南、そして評価システムへの影響などを予め説明し、理解を得てから導入することが大切でしょう。
2. 経営陣や情シス中心で導入したため現場に馴染まなかった
システムを導入する以上経営陣と情シスが絡むのは仕方のないことですが、あくまでSFAを利用するのは現場の営業マンです。
現場を無視して導入してもシステムとして機能することはおそらくないでしょう。導入検討段階から現場責任者を巻き込み(むしろ中心にして)、現場の声をしっかりと反映させた導入が非常に重要です。
3. いきなりフル機能で導入して扱い切れなかった
これもよくある失敗パターンで、SFAは基本的に高機能なのですぐに全てを使いこなすことは難しいシステムです。ましてや営業マンごとのITスキルにムラがあればシステムに慣れない者が出てくるのも当然でしょう。
意外なのが、成績トップの営業マンほどSFA導入で潰れやすいということです。実は仕事ができる人ほどスケジュール管理を手帳で行っていたり、アナログ人間が多いのでシステムの利用を強要されるとペースが崩れてしまいます。
こうした理由から会社のエースストライカーを失ってしまうケースも多いので、注意が必要です。しかも、システムを導入したからといって急激に成績を伸ばす者が出てくるわけでもないので、売上げが大きく落ち込む原因にもなりかねません。
SFAの導入は少しずつ、スモールスタートで徐々に拡大していくのがセオリーです。
まとめ
今回色々と営業支援システム(SFA)について解説しましたが、営業に欠かせないシステムであることが分かって頂けたでしょうか。特にビッグデータの活用が叫ばれてる現代ビジネスでは、顧客から吸い上げられる情報は一つの金脈でもあります。
日々蓄積されている営業情報をマーケティングで企画開発へ打ち上げ、上手に活用することができれば、SFAの効果を最大限に引き出せることでしょう。
また、最近ではマーケティングオートメーションとの連携の重要視されており、今や現場の営業マンだけのシステムではなくなっています。ですのでSFAの導入検討をする際は広い視野でプロジェクトを推進していくのがおすすめです。
成長していく企業とは多様化する顧客ニーズと複雑化するタッチポイントを制し、営業とマーケティングを俯瞰して適切なシステムの選択と導入を成功させた企業なのかもしれません。
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